タイムスリッパーマン
「もしもし。中居?あぁ中居か。久しぶり。解散して以来じゃないか?」
「そんなことより木村、慎吾が自殺したの聞いたか?」
「自殺!?慎吾が!?」
「最近仕事が少なかったかなんかで」
「ちょ、待てよ」
「老い先を悲観して身投げして」
「ちょ、待てよ!」
「即死だったらしい」
「ちょ、待てよ!!!」
「・・・」
「中居・・・?おい、中居どうした?」
周りを見渡した俺はすべてのものが一時停止しているのに気づき叫んだ。
「ちょ、待てよ!!!!!」
これが俺の初めて時を遡った記憶だ。どうやら俺が「ちょ、待てよ」と3度繰り返すと 時が「待つ」。そして更に1回叫ぶと時間は駆け戻る。森が脱退した頃のSMAPへ。
「どうしたの木村くん、深刻そうな顔して」
「慎吾・・・!お前生きて・・・!」
「いや勝手に殺さないでよ(笑)それより青いイナズマの振り早く覚えないと」
「ここは・・・?」
「ダンススタジオじゃん。森くんがいなくなっちゃったんだし、しっかりしてよ」
「森・・・?(まさか、これはタイムスリップ!?)。そうだ慎吾、お前仕事の選り好みなんてするんじゃねぇぞ!」
そうして何度も慎吾に選り好みを避けるように言ったんだが、全然聞く耳を持たない。そのせいで仕事が少なくなって自殺しちまうっつーのに。俺は最終手段に出ることにした。
女装に武士、忍者、猿、警官、宇宙人とこれだけの色物を充てておけば、仕事を断るような羞恥心もなくなるだろう。
「おっはー!ござる!ニンニン!なまか!ほげぇえええl!うんうん!ドールマン!」
【なんJネタ】香取慎吾「もうアホな役やりたくない…」(なんJには)与えられねーわ@なんJまとめ
これで慎吾も選り好みをしないようになる。自殺する未来は書き換えられたはずだ。SMAPが解散しても5人共まともな余生を送れればいい・・・。
「もしもし。中居?あぁ中居か。解散して以来じゃないか?」
「そんなことより木村、吾郎が事故死したの聞いたか?」
「事故死!?吾郎が!?」
「運転してた車でスピード出しすぎて」
「ちょ、待てよ」
「中央分離帯にぶつかって」
「ちょ、待てよ!」
「即死だったらしい」
「ちょ、待てよ!!!」
叫んだ。
「ちょ、待てよ!!!!!」
「どうしたの木村くん、深刻そうな顔して」
「吾郎・・・!」
「何そんなに驚いてるの(笑)それより青いイナズマの振り早く覚えないと」
「ここは・・・?」
「ダンススタジオだろ。森くんがいなくなっちゃったんだし、しっかりしてくれよ」
「そうだ吾郎、お前車なんて運転するんじゃねぇぞ!」
そうして何度も吾郎に運転を控えるよう言ったんだが、全然聞く耳を持たない。運転を控えなければ死んじまうっつーのに。俺は最終手段に出ることにした。
(よし、吾郎は車に乗ったな。この瞬間を狙って時間を止める。そして府警を車まで連れてくれば・・・)
「ここ、駐禁ですよ。免許証見せていただけますか?」
「くそっ(ブーン)あっ」
これで吾郎も運転に気をつけるようになる。事故死する未来は書き換えられたはずだ。SMAPが解散しても5人共まともな余生を送れればいい・・・。
「もしもし。中居?あぁ中居か。解散して以来じゃないか?」
「そんなことより木村、草薙が事故死したの聞いたか?」
「事故死!?剛が!?」
「酒飲んでてふらついたかなんかで」
「ちょ、待てよ」
「車道に出たところを轢かれて」
「ちょ、待てよ!」
「即死だったらしい」
「ちょ、待てよ!!!」
叫んだ。
「ちょ、待てよ!!!!!」
「(くそっ慎吾・吾郎と来て剛かよ!)」
「どうしたの木村くん、深刻そうな顔して」
「剛・・・!」
「何そんなに驚いてるのさ(笑)それより青いイナズマの振り早く覚えないと」
「そうだ剛、お前酒なんて飲むんじゃねぇぞ!」
そうして何度も剛に酒を控えるよう言ったんだが、全然聞く耳を持たない。酒を控えなければ死んじまうっつーのに。吾郎の時でわかったが、大体SMAPてのは全員我が強い。言ったくらいで治るようなもんじゃない。俺は最終手段に出ることにした。
(よし、剛はもう酔っ払って前後不覚だ。この瞬間を狙って時間を止める。そして服を脱がせれば・・・。ちくしょう、このベストジーニストなんでこんなタイミングでスキニー履いてるんだ!脱がせきれねぇ、くっ時間切れだ)
「ここはぁ、どこだぁ・・・!頭クラクラして分かんねぇ・・・。そこにいるのは・・・?」
「(俺がここにいるのがバレるとまずいっ)つよポンが酔払って服汚れちゃってたから脱がせてたのよ」
「慎吾だったのか、あ、気持ち悪い(オエー」
「ちょ、待・・・!(くっ、言い切ったらまたタイムスリップするところだ)」
「慎吾、水とかない・・・?」
「お、おぉ、水な、取ってくるよ(もう脱がしきったから後は通報を待つだけ。後生だ剛、お前のためなんだ)」
「しんご・・・?どこだしんご・・・?シンゴーシンゴー!」
これで剛も酒に気をつけるようになる。事故死する未来は書き換えられたはずだ。SMAPが解散しても5人共まともな余生を送れればいい・・・。
「もしもし。中居?あ、剛?剛か。解散して以来じゃないか?」
「そんなことより木村くん、中居くんが自殺したの聞いたか?」
「自殺!?中居が!?」
「解散してから落ち込んでたらしくて」
「ちょ、待てよ」
「住んでたマンションから飛び降りて」
「ちょ、待てよ!」
「即死だったらしい」
「ちょ、待てよ!!!」
叫んだ。
「ちょ、待てよ!!!!!」
「(くそっ俺以外全員死ぬのか!)」
「どうしたんだ木村、深刻そうな顔して」
「中居・・・!」
「何そんなに驚いてんだ(笑)それより青いイナズマの振り早く覚えないと」
「あぁ・・・」
これまで、慎吾には色役を充て、吾郎には運転に気をつけさせ、剛には酒を控えさせ、未来を変えてきた。だが、中居はSMAPの解散が原因だ。簡単に取り除けるものじゃない。それでも、それでも、だ。
SMAPの解散を止めるしかない。
SMAPの解散を止められるのは俺しかいない。俺が、後ろ指さされようと4人を守る。今までの世界では、マネージャーの勧めでジャニーズから離れ、ソロでそれぞれ活動してきた。最初は干されたりもしたが、皆頑張って乗り越えたものだと思っていた。だが、違ったようだ。苦悩を抱えていた。仕事の減少もスピードの出し過ぎも酒の飲み過ぎも考えていれば遠因は解散だった。
「俺は事務所に残ります。飯島さんに恩義がないわけじゃないんですが、俺には守らなきゃいけないものがあるんで」
「そう・・・わかったわ・・・。私は4人にそう話してみる」
スポーツ紙にリークしたのは俺だ。俺だけがジャニーズに残っても意味が無い。SMAPとして5人でジャニーズに残らなければ中居の未来は変えられない。だから、事務所の力を借りて独立は阻止させてもらった。俺が矢面に立たされることにもなるだろう。だがそれも中居を救うためだ。
「えー、今日は2016年1月18日です。先週から我々SMAPのことで世間をお騒がせしました・・・・・・・・・」
ふーっ、前室に戻るとさすがにため息が出た。慎吾は泣きそうだったし、中居も感情を抑えきれなくなっていた。このまま元の5人に戻れるのか・・・?だが、今はこれで、これでいいのだ。
コンコン
「木村くん、ちょっといいかな」
「吾郎か。どうした?入れよ」
「話してもらいたい人がいるんだけど・・・」
「誰だ・・・?」
そこに立っていたのは、吾郎の同居人ヒロだった。
「あ、どうも。直接会うのははじめてですよね。木村拓哉です」
「こちらこそ、どうも。でも、初めましてじゃないんですよ」
「会ったことありましたっけ?」
「やっぱわかんないか。じゃあ自己紹介します。ヒロくんこと、
中居正広です」
どういうことだ・・・。こんな気狂いと吾郎は生活していたのか?
「あなた、いや木村、お前タイムスリップしてるだろ」
「な、何を・・・」
「電話している時にタイムスリップするもんだから俺も巻き込まれたんだよ」
そうか、タイムスリップするのはいつも中居と喋ってる時。だが、最後は剛と喋っている時だったはず・・・。
「そう、剛も巻き込まれてる。今日一緒に挨拶したの、あれ未来の剛だよ」
そうか、未来のサイボーグ化した剛だったのか。どうりで。
「タイムスリップする当人は意識だけが飛ばされるようだけど、巻き込まれると肉体ごと飛ばされるらしくてさ、困ったよ。ただおかげで、ただの中居正広として結婚して子も作れた。感謝してるよ」
「ってことはちょっと待て、さっき挨拶した中居とお前と2人中居がいるってことか?」
「そう。俺らは直接会ったらどうなるかわからない。だから、木村、お前に俺の自殺を止めてもらうしかなかった。大変な役回りをさせてすまない。KANSHAしてる」
「剛は?いま本物の剛はどうしてるんだ?」
「剛はサイボーグ剛と一緒にいるはずだ」
「同じ人間が会って大丈夫なのか?」
「たぶんオーライ。剛はダンスやってるからな」
「吾郎、お前はこいつが中居だって知ってたのか?」
「あぁ、僕も最初は嘘だろうと思ったんだけど、言うことすべてが起こっていくからさ。さすがに信じざるを得なかった。僕のたいせつだった人の結婚相手まで予言されたからね」
「なら、こっちの中居からSMAPを解散させちゃいけないって聞いたろ?なのに、なんで最初は独立を選んだんだ」
「僕も最初は解散させないために残ることも考えた。だけど、僕と木村くんがジャニーズに残ったとする。そしたら3対2で敵対する未来しかないよ。そのまま空中分解さ。なんとかSMAPを存続させたとしてもそのわだかまりは消えない。4対1だからこそ4人が木村くんを仮想敵としてまとまり、SMAPとして存続しうる。木村くんが許されれば関係は元に戻るんだ。だから、あえて最初は独立を表明することでSMAPを存続させようとした」
「なんだ、俺の目論見はすべてバレてたんだな。俺ははだかの王様だったってわけだ」
「少なくとも、木村くんのおかげで俺たちに明日はある。世間は知らないかもしれないけど、俺達はずっと忘れない。ありがとう」
「ありがとうなんてよせよ。どんないいことしたのかと思われる。こんなの普通のコトだ」
「じゃあおおきに」
「毎度あり」
fin
あれから僕たちは、何かを信じてこれたかな・・・。
愛が止まるまではこの瞬間、きっと夢じゃない。